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2話 彼女はかく語りき

      2014/09/01

 - CASE01【桜色仙台城】, 探偵読物 , , , ,

私がめでたくこの飯田橋駅前探偵事務所に採用されて、2週間後、社長から電話で呼び出された。

お客が来るので、それに同席して経験を積め、とそういうことらしい。時給をくれると言ったが、もらってしまうと働かなくてはならないので、辞退した。もちろん、働き始めるのだが、こっちにだって、それなりの心構えがある。突如、いまから働け、と言われても困る。
いらないっていうなら、あげないけど、真面目に聞いてろよ、と社長はあっさり言った。こういうところはじつにはっきりしたひとだ。
かくして、私は飯田橋駅前探偵事務所で、室田真澄さんの話を社長と聞くことになった。
まあ、まずはためしに大橋が話を聞いてみろ、とあっさり言われたので、私は前情報はほぼなにもなく席についた。
せいぜい、彼氏が二股をかけているようだ、という程度の情報しかない。
しかし、これは私だけでなく、飯田橋駅前探偵事務所自体がこの程度の前情報しか持っていない。電話で話すとブレるし、表情が見えないから、という理由で面談まであまり深くは聞かない方針らしい。とりあえず、会ってみて、それからだな。断ることもあるし、とにこやかに社長は言った。
断ることもあるし。私の脳裏に面接を受けに来た日に追い返された男性の後ろ姿がありありと浮かんだ。
「あの女が悪い」という言葉をリアルに聞くのは、始めのうちはちょっと衝撃的であった。
が、むろんそのうち慣れる。意外とみんなこのセリフを言う(といって、私の探偵業歴が長いわけでもないので、ただの偏りかもしれないが)ので、むしろそっちにやや驚く。
室田真澄さんはどしりと私と社長の前に座って、春子さんがお茶を置いて部屋を出ると、うずうずした様子で話し始めた。
室田真澄さんの、名前は美しいが、容姿はさほどでもない。
40を越えて、結婚はまだ。
結婚はまだ、だが、彼氏はいる。
しかし、これがまた問題なのである。
「あのね、アタシだってチャンスの2回や3回はいままでにあったわけ! ただ、それがあるでしょ、なんかこう、どれも微妙な! 本当に微妙な差で、なんかのタイミングが合わなくって、みたいな話」と室田真澄(40)は私にまくし立てる。
それにはあ、まあ、ですね、などと漠然と相打ちしてはいるものの、今回の話からいつの間に脱線したのか、私にも皆目見当がつかない。
「いや、室田さん、昔の話じゃなくて、いまの彼の話してください」と社長がさらり、と言う。
「あら、ごめんなさいね。でね、どこまで話したかしら?」
本人にも皆目見当がついていなかったようなので、痛み分けと言っていいだろう。
「それで、その<桜色仙台城>さんはどんなひとです?」と社長が訊いた。
もはや私に話させていたのでは、らちがあかない、と判断したのだろう。私がこんなことを言うのもアレだが、たしかに私が話していたのではらちがあかないので、正解だ。
室田さんの彼氏は<桜色仙台城>という30歳のサラリーマンである。
「もうね、なんて言うか、お願い、って言って、嫌だ、って言われたことないくらいなんでもしてくれるの」と室田さんは言った。
押しに弱い、と言ったところか。
「ちょっと甘ったれてるっていうか、なんだろ、そこまでガッツリは来ない感じ? 草食系とか、そういうのともまた違う気がするけど……。ああしたい、こうしたい、とかもあんまり言わないかな。デートとかは、だいたいあたしが行くところ決めてる」
なるほど、<桜色仙台城>氏はどうやら私とそれほど遠い人間ではないようである。
「でも、それでいて、ちょっとソワソワしてるっていうか、せっかちなの。待ち時間とか、すぐイライラするから、あんまり長い待ち時間だといいや、やめとこう、って思うタイプかな。でね、それがすぐ顔に出ちゃうの。まあ、そういうとこが魅力でもあるんだけど」
欠点だけに思えるが、アバタがなんちゃらというやつなのか。
「いや、でも、ほら、言うことは聞いてくれるし、優しいんだから」と室田さんはなんに対するフォローかよくわからないが、言った。
「なるほど」と私は他意なくつぶやいた。
「聞く限り、あんまり不満もなさそうですが」と社長が切り込む。
室田さんの表情は急速に曇り始め、さて、というふうに息をひとつついた。
楽しく彼氏の話を聞いているほうが気楽だが、とはいえ楽しいところに探偵はあまり必要ないのも事実である。
「<桜色仙台城>くんね、なんか他に女がいるみたいなのよ」
「それは本人が?」
「うん、まあ、なんて言うか、確定ってわけじゃないんだけど、ほら、ふたりでいるときにメールとか来る頻度が高いな、っていうときあるじゃない? 誰? って訊いても、うん、まあ、みたいな曖昧な返事するし」
それはまあ、確実に浮気だろう、というなにがしかのカンが働けばなかなかいい探偵なのではあろうが、むろん、私にはそこまでの経験もないため、浮気もあるけど、友だちのセンもあるよ、という曖昧なカンしか働かなかった。
「浮気でしょうね」と社長は断言した。
「そうなのかしら、やっぱり」
「ええまあ、まずまちがいなく。その浮気相手については実際に<桜色仙台城>さんに訊いたりしましたか?」
「いや、はっきりとは言われてないんだけど」と室田さんは言った。「なんか、茨城にそういう子がいるんじゃないか、って。まあ、そういうのって、いくらあたしでも訊きづらいじゃない」
「茨城?」
「そう。うちの会社ね、東京が本社で、大阪、福岡、仙台に支社があるんだけど、茨城とか、北海道とか、まあ、結構営業所も各都道府県にあるのよ。<桜色仙台城>くんは、もともと東京なんだけど、大学は茨城でそのままうちの会社に就職して、茨城営業所で働いてたんだけど、3年前かな、仙台支社に転勤になったわけ。で、そこであたしが営業事務をしてて、彼は営業で、みたいな感じ?」
「室田さんはずっと仙台なんですか?」と私はふと訊いた。
「そうよ。生まれてからずっと。いまの会社に入ったのは7年前かな。それまでは大学出てからちっちゃな会社で経理兼営業事務してたんだけど」
「それで、茨城に他の女がいるんじゃないか、と」と社長が訊いた。
「そう。わからないけど、いるんじゃないかな、って。私の思い過ごしならそれでいいんだけど、でも、まあ、2年付き合っててそんな感じは消えないんだから、たぶんいると思う」
「わかりました」と社長はにこやかに言った。「それで、真澄さんはどうしたいんですか?」
「あたし<桜色仙台城>くんと結婚したいと思ってるのよ」と室田さんは言った。「だからね、もう、この際、あたしも年だし、過去についてなんやかや言うつもりなんてないわけ」
若干、ヒートアップしている。と私は思った。
「だからね、いいのよ、いても、別れてさえくれれば。茨城の女さえいなくなれば、問題ないんだから。浮気なのよ、浮気! 茨城が全部悪いんだから、<桜色仙台城>くんと別れてくれればなんにも問題ないの」と室田さんは全力で言うが、まあ、調査してみないことにはなんとも言えない。対象にとって、じつは依頼者が浮気のほうだった、というパターンもわりとあるらしい。
「まあ、今回は室田さんが近いポジションにいるわけですから、その可能性は確かに低くはないでしょうね。ただ、<桜色仙台城>さんも、室田さんがもし100%魅力的であれば、きっとさっさと茨城と別れて、室田さんと結婚しようとすると思いますよ」
ズバリと言った。
社長はこういうところでオブラートに包む、ということはしない。依頼者側にも問題がある場合はそれを取り除いてこそ、真の仕事であると堅く信じている。
客、減りませんか、と私は尋ねたいが、それすらオブラートを何重にも包んで、結局よくわからないことを言ってしまう私には、きっとこのひとの真似はできない。
「それはそうだけど……」
「いや、なにも手遅れだと言っているわけではないんです。室田さんも変わらなくてはいけないことがある、ということをお伝えしておきたかったんですよ」
神妙に室田さんは頷いた。
「できるだけ、ちょっとずつでいいので、<桜色仙台城>さんの言うことを聞いてあげるのもいいかもしれませんね。そのあたりも調査していれば見えてくる部分が多いでしょうから、私からも適宜室田さんにお伝えします。ときにはちょっとキツい言い方になるかもしれませんが、それは堪えてください」と社長は完全無欠な笑顔で言った。
「わかりました。よろしくおねがいします」すこし、しゅんとして室田さんは言った。
「では、まず、ウチは1週間事前調査をします。日程は別途組みますが、来週くらいから3週間で合計1週間分調査しますから、それからプランを組んで、という流れになりますね」
連続した1週間の調査は意味がない。これは持田さんにあとから教えてもらった。
その週だけ、ということが往々にして起こりうるから、今週は日月火、来週は水木、再来週は金土、というふうに何回かにわけて1週間分を調査するのがセオリーらしい。
この調査がしっかりしていないと、プランがろくなものにならない。できるだけ効率よく、正確に情報を得る必要がある。

 


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