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7話 仙台城址事変

      2014/09/01

 - CASE01【桜色仙台城】, 探偵読物 , , ,

桜は庭を汚しますからなあ。川端康成だったか、三島由紀夫だったかのエッセイでそんなことばが紹介されていた気がする。
私は他の仕事に一段落つけてから、持田さんに声を掛けた。飯田橋探偵事務所に入社して、1ヶ月とすこし。2件目の案件も持田さんと担当しているが、そちらも今月中には動き始めることになる予定で、その準備もしていた。
室田さんと<桜色仙台城>氏の件は、岬京子が順当に関係性を深めていて、2度ほど彼女は仙台に行った。いまではメールを2日に1度は交わす。じつに順当である。
持田さんが、ぱらりと写真を机の上に広げた。
「室田さんの件」と短く持田さんは言った。
写真には桜舞う仙台城址が写っている。完全に隠し撮りのアングルである。
「これは……。なんですか?」と私は訊いた。
「2度目のデート。桜キャッチゲーム、らしいよ」
むろん、その写真に写っている事象の説明が聞きたいわけではない。であるから、これはなんなのだ? と私は聞きたいのである。どういうことなのだ、と。どうしてこうなったのだ、と。いや、これは持田さんのシナリオどおりなのであるから、むしろこうなるべくしてこうなったのだ、ともちろん理解はできる。理解はできるが、いざそれを目の前にしてみると、許せない。ありていにいえば、たいへんうらやましい。
「大橋くん、あのね、これ、仕事だからね」と持田さんが私の発する空気を察したのか、呆れ気味に言った。
そんなことはわかっている。これは仕事なのである。なのであるがしかし、私の脳内は完全にこの写真と持田さんのシナリオから、想定される「この場で起こったこと」を再生し始めるのである。

「暖かくなってきましたね」と京子さんが言う。
「そうだね」と<桜色仙台城>氏がにこやかに答える。
<桜色仙台城>氏の最寄り駅からは車で3、40分と言ったところである。
仙台城は独眼竜・伊達政宗が作った城であり、別名青葉城である。そして、その城址を中心とした一帯が青葉山公園となっている。とインターネットに書いてあった。実際、行ったことがない私には知りようがない。
「あと、どのくらい研修あるの?」
「あと2回かな。入社時期が4月と6月と9月が選べて、6月を選んだから」と京子さんは答える。
「変わったシステムだね」
「いま、そういう会社もあるみたいです。不況だから、かな。いや、よくわからないけど」と京子さんは笑う。
「引越しの準備とかは進んでる?」
「うーん、片付けって苦手なんだよね」
ふたりは並んで、公園を歩く。ふ、と手が触れる。2度、3度。歩くたびに、わずかばかり、ほんのわずかばかり、手が触れる。
「土日だったら、こっちの引越しは手伝ってあげられると思う」
「ほんと? うれしいです。こっちに知り合いいないから」
落ち着け、落ち着くんだ<桜色仙台城>! おかしな点はいくつかある。なんだ、6月入社って? もう彼氏とも別れてこっちに知り合いがいないなら、なんでそのまま仙台の会社に就職する?
が、そんなことに気づくのは不可能である。
理由は多少強引でも問題ない。理由がある、ということが大事なのだ。ある程度関係性を深めれば、最低限の整合性さえ用意すれば、あとはなんだかんだと勝手に向こう側で都合のよい解釈をしてくれる。もちろん、<桜色仙台城>の事前調査があるから言えるんだけど、とこれは持田さんの弁である。
むろん、私とて、無理やりに疑っているからこそ、見える問題なのだ。警戒されている前で完璧な理屈を用意するよりも、無警戒のところへちょうどよい理屈を投げ込むほうが、はるかに自然だということなのだろう。
「いや、でも、土日も仕事あることもあるからね、そんなに喜ばれると……」と<桜色仙台城>氏はニヤけっぱなしで言った。
「もう、どうしてそんな意地悪言うんですかー」と京子さんは言った。「まあ、きっと<桜色仙台城>さんはなんだかんだで、手伝ってくれますけどね」
「まあ、たぶんだいじょうぶだと思うから、連絡して」と<桜色仙台城>氏は言った。
そして、ふと気づくとふたりの手は握られているわけである。いや、むろん、「ふと気づいたことにしている」だけであり、正確には京子さんが「ほんと? うれしいです。」と言ったときのその「うれしい」の「し」あたりで京子さんが<桜色仙台城>氏の手を握ったのであり、これはもう狙いすましているのであるがしかし、いちいち私とてそれを解説して悔しがるなどという行為を、想像に対してしていく気もないわけである。つまり、私は悔しがってはいない。私自身が言うのだから、きっとそうにちがいない。
ふたりはそんなふうなことを手をつなぎながら、桜の流れる公園をのんびりと歩く。
はら、はらり、と桜が舞い、季節は春なのだと誰の目にも明らかに映る。
ふと、京子さんは立ち止まる。
自然な速度で、自然な場所で、それはまるで、100%自然であるかのように、あまりに自然に。
「ねえ、知ってます? 桜キャッチゲーム」と京子さんは言った。
「なに、それ」と<桜色仙台城>氏は言った。
「ほら、ひらひら、落ちてるでしょ?」といたずらっぽく、京子さんが舞い落ちる桜の花びらを指さす。「これデートで捕まえると、しあわせになれるー、みたいな?」
<桜色仙台城>氏は照れくさそうに、しかし、そのゲームをする気にあふれている。
そして、私はBGMに山崎まさよし「One more time,One more chance」を流す。
ジャスラックの手前、歌詞引用ははばかられるが、私の脳内は大音量である。
思わず布団を抱きかかえてぐるぐる部屋を回りたい衝動に駆られる。だが、しかし、ここは事務所だ。
率直に言って、相当うらやましい。というか、これで落ちない男は豊島区中を探してもまずいないだろう。だがしかし、ここは飯田橋だ。
柴門ふみも弘兼憲史と小躍りしながら駆け出すくらいにはドラマティックである。
いや、私も見習い程度とはいえ、いちおう飯田橋駅前探偵事務所の一員である。
これは仕事なのである。だから、ここで悶えているのはプロらしからぬ所業である。
だが、しかし、これは悶えるのである。私は飯田橋駅前探偵事務所の一員である前に、まずひとりの人間なのである。

「おう、どうした、黙りこんで」と持田さんが言った。
「いやあ、<桜色仙台城>氏に対する怒りがこみ上げて来ました」
「安いやつだな、おまえ」
「なんとでも言ってください」
ふたり並んで歩く写真、ふたりで桜をキャッチしようとしている写真、無事掴めましたかよかったですねな写真、そのあと食事して、<桜色仙台城>氏が駅まで彼女を送っていくまでの写真。
「写真の撮り方もやっぱコツがあるから、まあ、それはこんど教えてやるよ」と持田さんは言った。
「このあとは、どうするんですか?」と私は尋ねる。
「室田さんとか、本命の存在を岬京子に言うかどうかで、最終局面は分岐するだろうな」と持田さんが資料を投げた。
私はいい加減にピリオドを打とうとしている私の初めての案件の結末に目を通しながら、いい加減に脳内のBGMをオフにしようとした。

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